好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

彼女の言葉があまりにもショッキングすぎて、完全に思考が停止した。
早発閉経気味って、何?

閉経が前倒しになるような症状が出てるってこと……だよな?

「仕事柄、夜型の不規則な生活が原因なのと。……ストレス過多によるものだそうです」
「それで、安定剤や女性ホルモンの薬を飲んでるってこと?」
「……はい」

何だよ。
俺が原因なんじゃん、やっぱり。

もっと俺がしっかりしてれば。
周りがどうとか、理性がどうとかの問題じゃなくて。
お互いの気持ちが一番大切だったんだ。

「ごめん。……本当にごめんね」

言い訳も体裁も考えず、ぶち当たっていけばよかったんだ。
嫌われたくないからだなんて、今考えたら虫唾が走るな。

「二谷から聞いたんだけど、お義父さんからずっと孫を催促されてたの?」
「……はい」
「お義父さんには何て言って交わしてたの?」
「……殆どは、二谷が上手く誤魔化してくれてましたが、仕事や過労とかそれらしい言い訳を。でも最近はそれも限界で」
「それで検査するに至ったってわけか」
「……はい」

空になっている缶を彼女の手から取り、それをテーブルの上に置く。
そして、彼女と向かい合うように体の向きを変えた。

「話を纏めると、俺らは相思相愛ってことだよな?」
「っっ……」
「胡桃?」
「……狡い」
「ちゃんと確かめ合うって言っただろ?」

二人きりの時に呼び捨てになどしたことがなかった。
だけど、いい機会だと思う。

だって、俺。
6歳も年上なんだよ。
好きな女の名前くらい、呼び捨てにしたい。

「俺は胡桃が好き。……胡桃も俺が好き。……で、合ってるよな?」

彼女の両肩を掴んでそっと顔を覗き込むと、照れながら彼女がこくんと頷いた。
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