好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜


「眠れない?」
「っ……」

寝れるわけないじゃない!!
辛うじてバスローブは身に着けてるけど、こんな風に抱きしめられて眠るだなんて初めてだもの。

体調不良になった時に抱きつくようにして寝てしまったことはあったけど。
ほぼ素面の状態で、こんな状況……。

普段だったらビール缶半分くらいならほろ酔いになるけど。
さすがに今日は酔えないというか。
酔ってしまって、この夢のまた夢のような状況を無かったことにはしたくない。

手触りのいいタオル地のバスローブ越しに、彼の鼓動と体温が伝わって来る。
私の心臓の音も伝わってるよね?

向かい合う形で抱き締められ、彼の首筋に顔を埋める状態で、既に1時間近く経過したんじゃないかな?


『初めての時は…』

何であんな事を言っちゃったんだろう?
初めて尽くしで、脳内が完全にパニクってたんだと思う。

あのまま、勢いに流されて。
彼に抱かれたらよかったのかもしれない。

だって、彼の気が変わったらどうするの?
寝て起きたら、全てが夢だったらどうしよう。

馬鹿バカばかっ。

結婚して初めていい雰囲気だったのに。
経験値がなさすぎて、どうしたらいいのか。

「胡桃?」
「ひゃぃっ」
「……フッ」
「ん゛ん゛んんっっ~~っ」

恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。

「はぁぁぁああぁぁ~~っ、かわいすぎかよっっ」

更にぎゅっと抱き締められた。
さっきの言葉を撤回したいと言ったら、彼は何て言うだろう?

「再来週の結婚記念日なんだけどさ」
「……はい」
「何日か休んで、新婚旅行に行こうか」
「………え?……えぇぇぇっ?!!」
「ね?……そうしよう!!」
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