好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
ホテルからは少し離れていて、空港に程近い場所にある割烹居酒屋。
獲れたての鮮魚と、沖縄と言えばアグー。
それと宮古島に来たのなら、宮古牛は欠かせない。
ホテルからタクシーで向かい、15分ほどで到着した。
「メンソ~レ~」
「予約した、淪です」
沖縄の言葉を聞くと、ほっこりする。
本当に夢じゃないんだと、心が満たされてゆくからだ。
掘り炬燵のような、足下がくり抜かれたテーブル席の個室に案内された。
既に店内には多くのお客がいて、賑わっている。
彼はメニューを手にすると、次々と注文してゆく。
その姿ですらカッコいい。
「適当に頼んだけど、大丈夫だった?」
「はい」
会食慣れしている彼は、本当に頼りになる。
ううん、違う。
私が世間知らずなだけだわ。
高級レストランや料亭などで行われる会食は慣れていても、こういう雰囲気の居酒屋は殆ど経験がないから。
何が正しいのかも分からない。
彼がテーブルの脇に置いたメニューを手に取り、興味本位にそれを見てみる。
「沖縄と言ったらやっぱり泡盛だけど、さすがに度数高いし。胡桃には、度数低めのカクテル頼んどいたから」
「……ありがとうございます」
「それそれ。……いい加減、その口調何とかならない?」
「あ…」
6歳も離れているし、7年もこういう会話しかして来なかったから。
すぐのすぐには変えられない。
「士門さん」
「ん?」
「連れて来て下さって、本当にありがとうございます」
「……俺が来たかったから」
「へ?」
「本当は7年前に、ちゃんとしておけばよかったんだけど。……今になってごめんね」
「……いえ」
テーブルに頬杖をつく彼は、優しい眼差しを向けて来た。