好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
「とりあえず、乾杯しよーか」
「……はい」
海ぶどう
ゴーヤの漬物
やんばる鶏のよだれどり
芝海老の唐揚げ
じーまみ豆腐の揚げ出し
麩チャンプルー
とろとろラフテー
宮古牛の特上炙り寿司
次々とテーブルの上を埋め尽くすように盛られたお皿が並んでゆく。
彼はおすすめされた泡盛を。
私は彼が選んでくれたカクテルを。
「こういう沖縄料理をつくるゲームってのも面白いかも」
「え?」
「材料をチョイスして、調理するゲーム。採点式っていうの?完成度を競うみたいな」
「……なるほど」
「中に何が入ってるのか分からないから、結構面白いかな~とか思うんだけど。中華料理とかでも違うバージョンつくれるしさ」
彼の頭の中はゲームのことでいっぱいみたい。
時折何気に口にする言葉も、ゲーム関連のことが多い。
「あっ、ごめんね。宮古島まで来て、仕事の話をしちゃって」
「いえ、聞いてて楽しいです」
「そぉ?」
「はい」
「そー言えば、獣クエ、レベル上げしといたから」
「本当ですか?!」
「フフッ、……うん」
半年前ほどにリリースされた、中国の神獣をモチーフにしたゲーム。
手技が複雑で、なかなかレベルが上げられず、任務(ステージ)が完全にストップしていた。
絵師の仕事が立て込んでて、このところ殆どログインできずにいたんだけど。
新しいイベントが控えていて、参加条件レベルに達してなかったから諦めていたのに。
「いつもありがとうございます」
「どぉ致しまして」
本当はログインパスワードを他人と共有してはいけないんだけど。
社長がしてるのだから、本末転倒だよね。
まぁ、夫婦だから許されるか。