好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「入るよ?」
「あっ、はい」

10分ほど前に先に入った彼女が、浴室の中から返答した。
本当に入るよ?
もう知らないよ??

白い大理石の壁。
プライベートビーチを切り取ったようなガラス一面の窓。
繭型の可愛らしい変形楕円の浴槽に、背中を俺に向けた形で彼女が湯に浸かっていた。

シャワー栓を押し、手早く髪と体を洗う。

白いバスタオルを巻いた状態で浸かっている後ろ姿でさえ、そそられて。
打ち上げ花火が上がってるみたいに、さっきから俺の心臓の音が凄まじい。

未だかつてない高鳴り。
初めてでもないのに。

「あっ…」
「ごめん、驚かせて」
「……いえ」

ジャグジーのボタンを見つけ、それを押してみた。
何も無いよりはマシかと思えて。

「景色がいいね」
「……はい」
「宮古島は来たことある?」
「無いです。沖縄には何度かありますけど」
「俺も初めて」
「そうなんですね」
「いい所だよね」
「……はい」

仕事が多忙で、海外は断念した。
まぁ、場所がどこであれ、彼女と過ごせるなら山奥の秘湯だろうが、無人島であろうが、どこだっていいんだけど。

「そっち行ってもいい?」

繭型の両端にいる俺ら。
さすがにちょっと距離がありすぎる。

「……はい」

『ダメ』と言われても行くけどね。
この状況で嫌とは言えないか。

ジャグジーの振動で分かりづらいが、緊張で肩が震えてる気がする。
そんな彼女を背後からそっと抱きしめた。

「ずっと浸かっててのぼせない?」
「……だ、大丈夫です」

ビクッと震える彼女を抱きしめながら、色気ダダ洩れのうなじに見惚れる。
今のこのアングル、撮っておきてぇぇぇぇ~~っ!!
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