好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

彼に手を引かれ、ベッドの上に座らされた。

「緊張してる?」
「……そりゃあしますよっ」
「俺も」
「へ?」
「ほら…」

掴まれた手が、彼の胸元へと当てられた。
トクトクトクトクと結構な速さの鼓動に、彼も緊張してるのだと分かった。

「でも」
「…ん?」
「……士門さんは、初めてじゃないですよね?」
「………」

やっぱり。
私の目を見ていた彼の目が、僅かに動揺した。

「答えないとダメなの?」
「……いいです、答えなくて」

ほら。
ホッと安堵したよ、今。

分かってる。
彼はイケメンだし、色気はあるし。
かなり偏差値の高い大学を出ていて、21歳という若さで起業したくらいだから。
モテていただろうし、それなりに恋愛もたくさんしてたことくらい。

別にそれが嫌なわけじゃない。
今は私の旦那様なのだから、気にすることはないんだけど。

普通ではない?彼の性癖に合うような女性が過去にいたという事が少しだけ気になるだけ。

世の中、女性なんてごまんといるわけだし。
彼の好みの女性だってそれなりにいたに決まってるんだけど。

私は初めてだから。
少しだけ妬いてしまった。

「秘密にしてたことが、もう1つあった」
「へ?」

突然の彼の言葉に、トクンと胸が震える。
何を言われるんだろう。

「俺ね、……今まで恋愛したことないんだよね」
「……え?」
「かわいいなぁとか、綺麗だなぁとか思うことはあっても、『好き』になったのは胡桃が初めてだから」
「……」
「24歳にして、俺の初恋相手」
「………ッ?!!」
「だから、今、すっげぇドキドキしてる、ヤバいくらいに」

薄明りの中でも分かるくらい照れた顔で、彼は髪を掻き乱した。
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