好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
(士門視点)

バスローブ姿の彼女を見下ろす。
横たわる彼女は言葉にできないほど艶気があって。
恥ずかしそうにぎゅっと目を瞑っている顔ですら狂おしいほどに愛おしい。


異常なほど偏った俺の情欲ですら、笑って受け入れてくれた彼女。
カミングアウトした時はさすがに驚かれたけれど、『それも個性ですよ』と言ってくれてた。

彼女的には、もっと激しい愛のカタチを仕事として描いて来たという。
彼女が手掛けた作品全部を見たわけではないから、きっと胡桃さんには胡桃さんの思うところがあったのかもしれない。

こんな稀有な俺でさえ、真正面から受け入れてくれたのだから。

「し……もん、さん」
「ん?」
「私、……おかしな所があったら、遠慮なく言って下さいね」
「え?」
「……初めてだから、その……変な行動してしまうかも…しれないので」

『初めてだから』
これ以上に嬉しい言葉ない。

誰の手垢もついてない純真無垢な女性。
俺が求めている最高の贈りものだ。

「俺ら夫婦なんだから、何したっていいんだよ?」
「ふぇっ…?」
「あ、言い方おかしかったな。えっと、浮気とか不倫とか、そういう類はもちろんNGね」
「……はい」
「そうじゃなくて」
「……」
「今から俺がすることに対して、我慢しなくていいから」
「……」
「辛ければ辛いと言っていいし、痛ければ叩くなり噛むなり、言葉で言うのが難しければ、態度で示してくれていいから」
「……っ」

俺が何を言いたいのか、分かったようだ。
恥ずかしそうにこくんと頷いた彼女。
きゅっとシーツを掴む手に力が入った。

本当にかわいいなぁ。
こんな僅かな仕草ですら、もう俺タジタジなんだけど。

あぁ、もう~~っ。
こんな可愛い天使に、俺のドロドロの愛を刻み込んでいいんだろうか?
ほんの少し罪悪感に駆られた。
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