好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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「体、……大丈夫?」
「………はぃ」


『初めて』が、こんなにも大変だとは思いもしなかった。

嫌というほど関連資料で学んでいたし。
士門さんにはお伝えしてないけど、そういう関連の動画だってたくさん観た。

その上で、絵師として求められている描写をイラストに込めて来たけれど。
実際のそれらとこれとは雲泥の差というか、次元が全くの別物だった。

初めてだから痛みがあるのは覚悟していたけれど。
その前の段階ですら、天国と地獄を行ったり来たりするようなことの連続で。

もう途中から意識が何度も飛んで、記憶が曖昧な部分が多すぎる。

愛し合う者同士で求めあうことの行為が分からないわけじゃない。
むしろ、分かりすぎていたのかもしれない。

二次元と三次元の違いに、頭よりも体がついていかないだなんて。

『初めて』なのだから、体が悲鳴を上げることは当たり前。
それ以上に、『愛されている』と実感できた喜びの方が何倍、いや何百倍もある。

体の隅々まで幸せで満たされる感覚。
触れる部分全てで、彼の愛おしさを感じれた。

今もこうして。
甘美な声音で語りかけてくれて、愛おしむように髪が撫でられる。

「俺にこうして欲しいとか、こういう風にされたいとかある?」
「へ?」
「甘えてと言っても、すぐには甘えられないかもしれないけど。二谷じゃなくて、夫である俺に、これからは何でも強請って欲しいんだよね」
「っ……」

士門さんは何かにつけて『二谷』を引き合いに出して来る。
それだけ、彼の視界に私と二谷が二人でいる時間が多かったのかもしれないけれど。

「では3つ、お願いしてもいいですか?」
「3つと言わず、100でもいいよ」
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