好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

彼の腕の中で深呼吸する。

ピロートークでの妻のおねだりは、男性にとって萌えキュンなシチュエーションなのは知ってるけれど。
いざ、自分の口から言うとなると、相当ハードルが高いことが分かった。

次にこういうシチュを描く時は、もっとアップショットを多めに入れないと、だなんて脳内で考えてしまった。
彼が仕事脳なのと同じように、私も相当仕事脳らしい。


「えっと……」
「ん?」
「……寝室を1つにしませんか?」
「っ…」
「お互いに仕事に追われて、顔を合わせる時間が少ないからこそ、寝る時くらいは一緒にいたいです」
「即採」
「え?」
「あっ、ごめん。即採用の略。異議なしってこと」
「……フフフッ、本当に仕事の鬼ですね」
「ごめん」
「いえ、士門さんの仕事ぶりが垣間見れて嬉しいです」
「そんな風に言うの、君くらいだよ」
「そうですか?」
「うん」

仕事をしている時の士門さんはカッコいい。
仕事をしてなくてもカッコいいけど。
仕事をしている時の表情は、本当に惹き込まれてしまうほど魅力的だから。

「2つ目は?」
「……書斎の鍵を私にも下さい」
「あ…」
「ダメ……ですか?」
「いや、あげるよ。ってか、もう鍵かけなくてもいいんだけどね」
「え?」
「まぁ、キーパーさん達が勝手に入るのはちょっと困るから、やっぱり鍵渡すよ」
「はい。書斎のお掃除は、木下さんじゃなくて、私にさせて下さいね?」
「……ん、お願いする」

木下さんが書斎に出入りする理由は、掃除のためだと判明したから。
精密機械がびっしりと並べられている部屋。
企業秘密も多いから、第三者の出入りを禁止せざるを得ないのは分かってる。

だからこそ、『妻』である『私』がすべきこと。

「3つ目は?」
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