好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「士門さんをモデルにしたコミックの原作を描いてもいいですか?」
「へ……?」
「今まで挿絵とか表紙絵とかが中心で、コミカライズで作画を担当したりはあるんですけど。自ら原作を描いたことがないので、最初の作品は士門さんをモデルにしたいとずっと考えていたんです。もちろん、名前や設定は変えますけど、絵のモデルを士門さんにしたくて」
「俺なんかでいいの?」
「士門さんがいいんです」
「フフッ、いいよ。俺でよければ、幾らでも使って」
「わぁ~、ありがとうございます」

結婚して7年。
ずーっと脳内で妄想して来た。

完璧なビジュアルな旦那様が好きなのになかなか素直になれない妻と、どストライクな好みの妻なのに、好きすぎて簡単に手が出せない夫との、『好き避け夫婦』の話。

こんな夫婦だったらいいのになぁ、と思っていたその通りの展開になるだなんて。

「じゃあ、俺からもおねだりしていいかな?」
「はい?」

抱きしめられていた腕が緩み、隣りに寝ていた彼があっという間に私の上に。

「気分よく満足してるところ申し訳ないんだけど」
「……はぃ」
「夜はこれからだから♪」
「ッ?!!」
「言ったよね?……俺、相当性欲が強いって」
「っっっ」

キュッと結ばれた口角。
薄めな唇から僅かに現れた舌先が、煽るように舐めなぞる。

まだお腹の奥に違和感が残っているというのに。
彼は容赦なく唇を塞ぎ、熱い舌先を滑り込ませて来た。

『初めて』というのは、本当に最初のことを意味しているの?
『初夜』という言葉があるくらいだから、今夜が初めてだと思っていたのだけれど。

もしかして、一晩で一気にレベル上げされるんじゃないだろうか??

不安とドキドキと、満たされる幸福感で。
体のありとあらゆるところが、彼の熱で魘されてゆく―――。
< 128 / 148 >

この作品をシェア

pagetop