好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
アブナイ趣向

「お嬢様、いつまでそうやって眺めてるんですかっ」
「……だって」
「早くしないと、士門様が…」
「分かってるわよっ。……だけど、ちゃんとした形を見たのは初めてだし、変にヌルヌルしてて」
「……」
「それに、硬いというか……弾力があるというか…」
「……はぁ」
「だってだって、思ってたより生臭いんだもんっ」
「これはそういうものなんです」
「……ぅっ…」
「お嬢様が士門様のために覚えたいと仰るから、こうしてわざわざ私が自ら「分かってるわよっ!やればいいんでしょ、やればっ!」

胡桃は深呼吸し、意を決して指先で嫌々と抓むように……。

「ゆっくり、……そうですそうです!お上手ですよ」
「ん゛んんっっ~~っ」
「なぁ~~~にしてんの?俺のいない所で二人でいちゃいちゃと」
「ッ?!士門さぁ~~んっ!!」
「おぉっっと、さすがにその手では止めてくれ」
「っっ」

三つ揃えのスーツ姿で帰宅した彼は、キッチン横の壁に凭れるようにして声をかけて来た。
そんな彼に駆け寄った私は、両手を衝立みたいに突き出した彼の手によってハグを拒否されてしまった。

というのも、産地直送の新鮮なイカが手に入ったから、今晩の晩酌のお供にと思って、イカのお刺身をつくろうとしていた。
けれど、捌かれてないイカだなんて触ったこともない。
二谷がレクチャーしてくれていても、手が震えて触れることさえ難しくて。

「士門さん、そのまま動かないで待ってて下さいね!」
「はいはい」

ハンドソープでしっかりと手を洗い、キッチンタオルで水気を拭いた私は、再チャレンジとばかりに彼にダイブ。

「お帰りなさいっ」
「……ただいま」
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