好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「表向きはイラスト担当ということになるから」
「はい」

『凱亞』が誰なのか。
未だに伏せられているから。

だから、夫婦のコラボ作品とは公にできない。
あくまでもALKのゲームの絵師として、契約することにすぎない。

「それと、来週出張が入った」
「どこへ行かれるんですか?」
「上海」
「……では、最低でも3~4日は不在なんですね」
「ごめんね」
「お仕事なので……仕方ないですよね」

これこれ。
こういうシュンとした表情が、何とも言えないほどかわいいんだよなぁ。

妻を残して何日も家を空けるのは心苦しいけれど。
こういう反応をされて、嫌だと思う男はいないだろう。

二人の間に『愛』があればあるほど、このシチュは王道必須の萌えシチュだから。

「まだ1週間以上も先なのに、困った妻だな」
「ムムムッ」

かっ、……かわいすぎるっ!!

ぷくっと膨れた頬も。
突き出されたぷっくり唇も。
くりくりっとした黒目がちな大きな瞳も。
ぎゅっと握られた白く小さな手も。
無意識にずいっと背伸びして俺を煽る顔も。

ああああああ!
もう何もかもがかわいすぎて、このまま浴室に担いで行きたい!!

ダメだダメだ、今はまだ。
家の中に奴がいる。

旅行から戻った俺らを見て、『漸く夫婦らしくなりましたね』だなんてあいつは言ってたけど。
分かってたんなら、もっと早くに言えっての!
7年も遠回りさせやがってッ!!

しかも、未だに彼女との距離感がおかしいんだよっ!!
無駄にフェロモン垂れ流しやがって!

「二谷って、付き合ってる人とかいるの?」
「え?」
「いや、何となく……気になって」
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