好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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『引っ越そうか』

突然の言葉に、少し驚いてしまった。
彼が言わんとすることが全く分からない。

「ここはさ、お義父さんが用意してくれたマンションでしょ」
「……はい」
「俺は、俺の稼ぎで家族を養いたい」
「っ…」
「それに、最新機材をもっと並べたいし、コレクションルームも欲しい」
「いいですね」
「夫婦の趣味全開の部屋があってもよくない?」
「フフッ、それがお目当てなんですね」
「……バレた?」
「父には私から話しておきます」
「俺の方からも話しとく」
「はい」
「じゃあそろそろ、お楽しみ再開といきますか」
「ッ?!……んっ」

今日は4が付く日だからかな。
ちょっと強引で性急なキスに早くも翻弄気味。

だって絡めとられる舌先から、お酒の味が伝わって来るから。

煙草は吸わない人だけど、毎晩のようにラガービールを飲む。
だから、彼とのキスはいつもちょっぴり苦めな味がする。

それが6歳差のコク深い味わいだと言えばそうなのかもしれないけれど。
このキスの味は、私だけが知っていればいい。
そう思ってしまうほど、彼を独り占めしたい。



「今日はいつになく、積極的だな」

いとも簡単に一糸纏わぬ姿にされ、恥ずかしさのあまり両手で胸元を覆う。
そんな私を見下ろし、彼は余裕の表情で上着を脱ぐ。

漫画によく出てくる根暗なゲーオタは貧弱な男性が多いけど、私の旦那様は全然そんなことはない。
むしろ、TL漫画に出てくるような均整のとれた体つきだ。

イケメンでスタイルも抜群で、頭もよくて。
世界中のゲーマーから崇拝されてるような存在の人。

そんな彼の潜熱に、体の隅々までとかされてゆく―――。
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