好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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「そう言えば、カレンダーについてるマーク、何なの?」
「っ……」

情事の後は、必ず彼の腕の中でピロートークを交わす。

彼は私の髪を優しく撫でながら、甘い声音で囁きかけて来る。

「何のマークに見えます?」

本当は『何の日でしょう?』とズバリ聞きたいところだけど。
例え妻であっても、重いと思われたくない。

25歳で早発閉経気味と診断されただけでも、恥ずかしいのに。
一日も早く『赤ちゃん』が欲しいとは、口が裂けても言えない。

「地球のマーク、だよね?」
「……はい」
「エコの日?んなわけないか。……イラスト講座の日とか?」
「残念、違います」

凱亞という名前は、ギリシャ神話に出てくる大地の女神からとったもの。
男性的響きを持ちながら、由来は女性を意味している。

七夕社の正式な契約書類にサインする際に、絵師らしく、オリジナルのマークに自筆のサインを入れている。
そのマークが、彼が言う『地球』に見えるマークだ。


正常な周期なら、28日前後で月のものが来るけれど。
私の場合、現在約45日程度の周期になっている。
だから、カレンダーに印のない月もあるから、彼には分からないと思う。

「もしかして、排卵日とか?」
「ッ?!!!」
「やっぱり……」

えっ、何で分かったの?
ハートだとか、お月様の形でもないのに。

「な、……何で分かったんですか?」
「普通分かるでしょ。夫婦の寝室に置かれてるカレンダーに記されてたら」
「……っ」
「何で地球のマークなのかは分からなかったんだけど、まぁ、胡桃らしいなぁと思って」

世間知らずもいいとこ。
彼の寝室を私たちの主寝室にした時から置いている卓上カレンダー。
それに仕事柄、色々書き込んでしまっている……。
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