好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
(士門視点)

結婚して7年半ちょっと。
年度末を迎え、ALK本社でも慌ただしい時間が流れている。

「木下さん、悪いんだけど、この書類を役員に通達して貰えるかな」
「……な~に、最近『木下さん』だなんて、ホント気味が悪いんだけど」
「それが社長に対する態度か?」
「ハル、聞いた?士門がちょっとおかしくなってる」
「嫁の影響だろ、どうせ」
「あ~ぁ、士門のロリ嫁ね」
「あのなぁ…」
「何よ」
「……もういい、とにかく、これを頼む」
「はいはい、役員に通達しておけばいいんでしょ」

ALKの経営戦略系は、春親の担当。
それを書類に起こしたり、法的業務もこなすのが友香の仕事。
俺の仕事は、トップクリエイターとしての技術を形にすること。
それはユーザーの需要を把握したうえで、常に斬新かつ最先端の分野を切り開くというのも。

三者三様で俺らは絶妙なバランスを取っている。

宮古島で7年越しの新婚旅行をして以来、夫婦仲は飛躍的に良くなった。

今ではバカップルと思えるほど、顔を合わせるだけでラブラブビームが発動されるくらいラブ度は高め。

若くて可愛い生粋の令嬢というだけでも、俺の夢を形にしたような妻なのに。
最近では、彼女から少しずつ甘えてくれるようになってきた。

そんな可愛い妻が、友香が俺のことを呼び捨てにしているのが癪に障るらしくて。
『今度呼び捨てにされているのを聞いたら、禁ゲー日設けますよ?』だなんて言うから。
肝が縮み上がったのは言うまでもない。

毎晩、ビール片手にゲームするのが生き甲斐なのに。
俺からゲームを取ったら、何も残らないじゃん。

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