好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜


「もうこんなに濡らして」
「あっ…ダメ、触っちゃっ…」
「……もう我慢の限界ですっ!申し訳ないですが、お嬢様、挿れさせて頂きます!!」
「えっ、やだっ」
「ん゛っん~、会話だけ聞いてたら、18禁ワード全開なんだけど」
「ッ?!士門さんっ」
「お帰りなさいませ、士門様」
「ただいま。……で、二人は今日もいちゃついてんの?」
「いちゃついてなんてッ!二谷がちっとも丁寧に教えてくれないから、ヤキモキしてたところよ」
「何を仰るんですか!私はもう2時間近くもずっと教えてるではありませんか」
「あーはいはい、分かったから。とりあえず、それは明日のおかずにして、今日の夕食貰えますか?」
「勿論です!直ぐにご用意致します」

毎度のこと、帰宅したらキッチンから二人の会話が漏れて来た。

料理や洗濯など、家事全般をしたことのない生粋のお嬢様である彼女が、最近俺のために料理を頑張っている。
簡単な料理から覚えればいいものを、彼女は俺の好物を作ろうと必死なのだ。

今日は、ごぼうの肉詰め照り焼きを作ろうとしていたようだ。

肉や野菜の照り焼きだけでも十分だし、椎茸やピーマンの肉詰めでも十分すぎるほど嬉しいのに。
何故か、ごぼうを柔らかく煮て、竹串で筋に沿ってくり抜いた上に肉詰めにしたごぼうを照り焼きにした、手の凝ったメニューをチョイスしたようで。

俺のために難しい料理に挑戦してくれるのは嬉しいし、有難いけれど。
どうにもこうにも二谷との距離感が納得いかないんだよな。

それでも、前ほど苛つかなくなったのは、奴が熟女好きだと知ったから。
俺との好みが正反対なのに、正直ホッとしている。
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