好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「ワッ!!」
「うぉっ…」

突然ぬくっとキッチンから現れた妻。
スマホを俺に向けたまま、楽しそうに俺の元へとやって来た。

「今の心境を一言で!」
「……は?」

何、これ。
えっ、もしかして、俺また何か引っ掛けられたの?

「いい顔♪」
「……っ」

やっぱり。
俺の妻は時々、いや、いつもぶっ飛んだことをしやがる。

「で、今日は何なの?」
「二谷のメモを見て、どういう反応を示すかな~と思って」
「……これ、全部嘘なの?」
「いえ、ホントのことです」
「は?」
「貴子さんが妊娠して、つわりが酷いからって、九州のご実家に送り届けに行きました」
「――――え?再離婚したんだよね?」
「はい、一昨年の年末に」
「……」
「で、先週再々婚したそうです♪妊娠が発覚して」
「マジかよっ!!」
「私もビックリしました」

一体、奴は何をしでかしてんだよっ!!

完璧な執事だと思ってたけれど。
最近じゃもう、似非執事だとしか思えねぇ。

「ご飯食べたの?」
「はい。二谷が作り置きしておいてくれたもので済ませました」
「……ってことは、暫く俺ら二人きり?」
「はい♪」
「マジか!」

いつも帰宅しても常に二谷がいるから、何となく気を遣ってしまってたけど。
暫くって何日くらいだ?
いや、もう何日だって構わない。
今夜を楽しまないと!

「胡桃、今から一緒に風呂入ろ♪」
「え?」
「二谷がいないならいちゃつき放題じゃん」
「っっ…」
「泡風呂?それとも酒風呂?何でも好きな風呂にしていいから」
「妊婦さんって、酒風呂に浸かってもいいんですかね?」
「う~ん、どうだろう?少なからず皮膚から浸透するから妊婦は避けた方がよさそうな気がするけど」
「では、暫く酒風呂は控えます」
「―――――え?」
< 145 / 148 >

この作品をシェア

pagetop