好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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「胡桃、今から一緒に風呂入ろ♪」

7年越しの新婚旅行以来、愛しの旦那様との時間は劇的に変わった。

『相当性欲強いから』とカミングアウトした彼は、度々二谷を早くに帰宅させ、こうして甘えてくる。

妻として求められることも嬉しいし。
私も彼の欲求を満たしてあげたい。

「泡風呂?それとも酒風呂?何でも好きな風呂にしていいから」
「妊婦さんって、酒風呂に浸かってもいいんですかね?」
「う~ん、どうだろう?少なからず皮膚から浸透するから妊婦は避けた方がよさそうな気がするけど」
「では、暫く酒風呂は控えます」
「―――――え?」

スマホで動画を撮影している私は、画面越しに驚いた顔をした彼をじっと見つめている。

貴子さんは、ここ1カ月くらい体調がずっと悪かったらしくて、更年期障害かと思って先週婦人科を受診したところ、妊娠が発覚したらしい。
更年期障害ではなく、つわりだったようで。
既に妊娠12週。

毎日ずっと傍にいてくれる二谷に家族が増える。
それだけでも嬉しいのに、貴子さんの妊娠が、とても他人事には思えない。
だって……。

「私も、赤ちゃんがデキました」
「………それ、何かの作品のセリフ?」
「違いますよ」
「だって、スマホで動画撮ってんじゃん」
「そういう反応は、パパとして失格ですよ?」
「………へ?」
「ベビちゃん、ショックだね~。パパ、ちっとも喜んでくれないよ~?どうする?拗ねてママの実家にでも行く~?」
「………」

スマホ画面に映る彼は、お腹を優しくさする私の手を強く掴んだ。

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