好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

挙式から一週間後。
北海道へと出張に行っていた士門さんが、数日ぶりに帰宅した。

「お帰りなさい」
「……ただいま」
「部屋に荷物を…」
「こんばんは、挙式の日以来ですよね。改めまして、秘書の木下(きのした) 友香(ともか)と申します」
「……こんばんは」
「社長のお荷物は、私が…」
「……では、お願います」

玄関のロックが解除される音が聞こえて来たから玄関へと急いで出迎えに行くと、士門さんのすぐ背後に、すらりとした容姿の女性がいた。
話には聞いていたし、挙式の時に軽く挨拶もした。
けれど、取引先の人を多く招待したこともあって、忙しそうに挨拶する彼にあれこれと聞くことはできなかった。

士門さんと同じ年くらいの女性。
メリハリボディで私には無い色気を纏い、尚且つ知的な印象の彼女は、彼のキャリーケースを引き、彼と共に彼の書斎へと入って行った。

結婚式の翌日の夜に、彼と取り決めしたことがある。

『夫婦のルール』というべきもので、お互いにこれだけは必ず守って欲しいという決まり事だ。

・書斎(仕事場)には決して勝手に入らない
・仕事柄、企業秘密が多いため、仕事に関しての質問は控える
・夫婦同伴が必要な場合は、必ずそれに応える
・会食が多いため、自宅での食事を強要しない
・昼夜問わず、スタッフの出入りを許可する

夫婦のルールというよりも、業務に関する規約のようなものだ。

夫婦本来の姿である、子作りに関することだとか。
記念日はどうするのか、だなんてことは一切話し合いには出て来なかった。

それは当然、『愛のない結婚なのだから(・・・・・・・・・・・)』と、釘を刺されたようなものだ。
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