好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

夜型の私は朝が弱い。
だから目覚めると、いつも彼が出勤した後。

『おはよう』と彼から挨拶されたのは、結婚してからたったの二回。
それも、たまたま休みだった彼が、昼近くに起きて来た私に声をかけたもの。

本来ならば妻として、朝早くに起きて朝食の用意をし、笑顔で夫を迎えるのがベストだろう。
だけど毎日のように仕事に追われ、夜にならないと集中できないのだから言い訳のしようがない。

だから実家でも邪魔者扱いされて、屋敷の最奥に追いやられていたのだ。

「二谷から見て、士門さんはどんな人?」

同じ男性という目線から見た彼は、少し違ったりするのかしら?

「そうですね。一見クールなように見えますが、仕事に対する熱量はとてもある方だと思います。それに、旦那様の話では、お酒がお強く、話題にも富んだ方だと。旦那様がお嬢様の結婚相手にと選んだ方ですから、間違いないかと存じますが」
「……そう」

父親とは酒を酌み交わし、会話も弾むのね。
私は未成年でお酒は飲めないし、仕事に関する会話も望めない。

十八歳、幼な妻、世間知らず。

だけど、これでも腐るほど色んなジャンルの書籍を読んで来たし、今時のコミックや小説の趣向に合わせ、大人表現の世界も沢山学んで来た。
実践は一度もないけれど。

淪家の一人息子だと聞いているから、将来的に跡取りを設ける必要があるのでは?と思ったけれど。
別に正妻から授からなくてもいい、という現実が突きつけられる。

愛のない結婚だから、世間体的に良い夫婦を演じる。
彼の社会的立場を考えたら当然なのだけれど、理解したつもりでいたのに、どうしても心が追い付いていかない。
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