好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
(士門視点)

「士門、今日も家に帰らないつもりか?」
「……」

親友であり、共同経営者であり、ALKの専務でもある春親(はるちか)(同じ年)が、報告書を手にして社長室に現れた。

六月にお見合いをし、九月に挙式。
そして、あっという間に三カ月が経ち、クリスマス目前。

新婚夫婦が初めて迎えるクリスマスだというのに、士門は浮かない顔で溜息を零す。

「自宅に帰っても、どう接していいのか分からなくて」
「どうもこうもないだろ。夫婦なんだから何でも話せばいいし、それこそ新婚なんだから、四六時中いちゃついてたっておかしくないぞ」
「……」

春親にはお見合い結婚だということは当然話している。
というよりも、今まで恋人すら作ったことのない俺が、ある日突然『結婚することになった』と報告したものだから、春親も友香も言葉を失うくらい驚いたっけ。

春親とは高校からの付き合いで、ゲーム仲間でもある。
ゲーマーとして結構有名だった俺らは、大学三年の時に起業した。

友香は春親の元カノで、俺らより二つ年上。
弁護士の資格を持っていて、起業する際に春親から紹介された。
彼女の父親が弁護士で、母親が公認会計士というのもあって、会社に関する法務や財務といったことを彼女に殆ど任せている。

「生粋のお嬢様には完璧な執事が常についてるから、俺なんて必要ないだろ」
「はいはい、聞き飽きたから、それ」

春親とは何でも話せるが、さすがにあの執事の攻略法を教えてくれとは言いづらい。
そもそも彼女は、夫としての俺を必要とはしていないだろう。

「正統な清純派のロリ婚が夢だったんだから、簡単に諦めきれんのかよ」
「っっ…」
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