好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

俺の性癖というか、好みを熟知している春親。

男のロマンとも言える、グラマラスなボッキュッボンといった女性らしい体型が好きな春親とは違い、士門の好みは清楚で初々しさが残る愛らしい女性だ。
誰の手垢もついてないような無垢な女性が好みで、まさしく胡桃のような女性がどストライク。

たくさんのゲームをしてきた士門にとって、胡桃は、萌えゲーのまさに王道中の王道のヒロイン像そのもの。
見た目だけでなく、立ち振る舞いや家柄、話し声に至るまで完璧なのだ。

結婚すれば、全てが手に入ると思っていたが、それは間違いだった。

生粋のお嬢様との結婚は、ゲームのようなシナリオ通りにはいかず。
触れることも、話しかけることも恐れ多い。

三カ月が経ち、最近では『見れるだけで幸せ』だと思うようになった。


制作スタッフとして働いている彼女は、チームの主力メンバーらしく。
彼女が担当する業務は、常に〆切に追われているという。

そして、結婚式当日に見せつけられた執事との関係性も、単なる執事というだけではなくて、彼もまた制作スタッフとしてチームの主力メンバーだということを知った。

仕事場とも言える書斎に二人で籠りきり。
部屋から出て来たと思えば、仲睦まじく見つめ合いながら会話している有り様。

俺と執事。
どっちが夫で、どっちが使用人なのか、第三者が見たら絶対に間違えるだろう。


彼女に会いたくて自宅に帰っても、一晩中部屋から出て来ないこともある。
自室のドアをほんの少しだけ開けておき、彼女が部屋から出て来たら、さりげなく声をかけようかと何度もトライした。

けれどその度に、打ちのめされるんだ。
彼女の部屋から出て来るのは彼女ではなく、執事の二谷だけだということに。
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