好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「結婚したんだから、お嬢様だとかそういうの関係なくないか?」
「……」
「幾ら仕事が忙しいって言ったって、寝る時間くらいあるんだから、妻のベッドに潜り込んだらいいだろ」
「……」
「言っとくけどな、お前が大事にし過ぎて手を出さずにいたら、その完璧な執事とやらに手を出されても知らねーぞ」
「っ…」
「お嬢様だって女だろ。最初は戸惑うかもしれないが、夫はお前なんだから、執事なんかに遠慮してんなよ」

そんな事が簡単に運んだら、最初から悩んでない。
二進(にっち)三進(さっち)も行かないから、こうして悩んでるんだ。

「そう言えば、オーク(大手通信機器メーカー)のクリスマス慈善パーティーの招待状が来てるって友香が言ってたな」
「……あぁ、聞いてる」
「それに奥さん連れて行ってくりゃいいじゃん」
「……」
「さすがに執事と腕組んで参加するような場所じゃないし、夫婦同伴だと言えば、奥さんだって納得するだろ」

春親の言う通り、夫婦同伴だと言えば、彼女は俺の提案を呑むだろう。
そういう夫婦の決まりごとになっているのだから。

「執事の目の前から掻っ攫って、堂々と腰に手を回して、その執事とやらに思い知らせてやれ。俺の女に手を出すなって」

春親が言うと、全てが簡単に解決してしまうように思えてくる。

「先に言っておくけど、俺その日、デートだから空いてないから」
「……ん」

春親は俺と違って交友関係も広く、女遊びも激しい。
別れたのに友香と友人関係に戻れたことも凄いと思うが、これまで修羅場になるようなことが一度もないことにも驚きだ。

一体どうやったら、女性の心が掴めるのか。
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