好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
「あの、……お帰りなさい」
え、何これ、幻聴?
めちゃくちゃ可愛い声が聞こえて来たんだけど。
「士門さん?」
「ッ?!!」
萌え声、萌え止め、お帰りコール。
やばっ、顔が緩んで振り返れない。
「お夕食は?」
「……済ませて来た」
「そうなんですね」
明らかに声のトーンが落ちて、しゅんとしたのが分かる。
意を決して僅かに振り返ると、ちょこんとジャケットを抓んだ彼女が、くりくりっとした目で上目遣いに俺を見つめている。
めちゃくちゃ近い、すげぇ可愛い、睫毛長いし、色白だし、肌綺麗で、モチモチしてそう。
仕事をしてたのか、前髪をピンで留めてて、おでこがめっちゃ可愛いっ。
天使だ、いや、小悪魔か?
しかも何だこれ。
眼鏡女子だっただなんて、聞いてねぇ!!
超似合うし、眼鏡越しの上目遣い、最強すぎる!!
唇プルプルに艶ってるし、なんかすっっげぇいい匂いがする。
触りてぇ~~~、マジで触ったら完全にアウトだよな?
ダメだ。
この距離感、ヤバすぎる。
あいつはどこにいる。
いつもは腰巾着みたいにべったりくっついてるのに。
「悪い。疲れたから、シャワーして休みたいんだけど」
早くここから脱出しないと。
本当に今すぐ触り倒してしまいそうだ。
「シャワーをしてる時の音を録音させて下さい」
「え?」
今なんて言った?
俺がシャワーしてる時の音を録音って聞こえたんだけど?
「ダメっ……ですか?」
何、その顔。
俺の理性HPを一瞬で振り切ったんだけど。
ダメも何も。
俺がシャワーしているのが気になるってこと?
そもそも、録音って何?
音フェチってこと??
お嬢様の隠れスキル、ハンパねぇな。
「えっと、その……、入浴に関することを取材?したいんですけど、頼める人が他にいなくて…」
「……あぁ、仕事で使うってこと?」
「あっ、はい!」
何だ、そうだよな。
俺なんかに興味があるわけないよな。
「別に構わないよ」
「え、本当ですか?!」
「……ん」