好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「今ので分かった?」
「……何となく。もしかして、私のためにわざわざお金を下ろして下さったんですか?」
「ちょうど入用だったから、気にしないで」
「……ごめんなさい」

取り出し口から十万円を取り、財布に入れた彼。
何事もなかったようにカゴを手にした。

「市販のお菓子、食べたことある?」
「へ?……何回か」
「じゃあこの機会に、食べたことないやつ買っておこうか」
「いいんですか?」
「それは俺が聞きたい。二谷に怒られるんじゃ?」
「それは大丈夫です!……父が、私がこういう俗世に関わるのを嫌っていたので」
「俗世って」
「父には内緒にして貰えますか?」
「そんなこと、いちいち伺い立てなくていいから。俺ら夫婦でしょ」
「っっ」

士門さんは再び私の手を掴んだ。

「これは?」
「ないです」
「じゃあ、これは?」
「それもないです」

次から次へと商品を手にしては私にそれを見せて、私が顔を横に振ると、その商品をカゴに入れる。
それも、凄く楽しそうに。

「あの、士門さんっ。もう本当にこれくらいで!」
「えぇっ、まだ二日分くらいしか入れてないよ」
「えっ?!」
「お菓子売り場の商品を全部買ってあげたいとこだけど、時間が押してるから、後は俺が適当に選ぶね」
「……」

彼が二日分と言ったけれど、三食の代わりにお菓子を食べるということだろうか?
二日分でも、物凄い量なのだけれど。

「あ、つまみも買っとこ」

おつまみコーナーの商品を幾つかカゴに入れた彼。
お酒に強いとは聞いているが、自宅で飲んでいる姿は一度も見たことがない。

別宅であの人と一緒に飲んでいるのかしら?
十八歳の私では、お酒に付き合う事は出来ないから。
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