好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
(士門視点)

コンビニ、ATM、助手席。
今時高校生でも経験したことのある、なんの変哲もない事なのに。
彼女はそれらが初体験だという。

穢れを知らない初心な女性がタイプだけれど、ここまで真っ白な女性は見たことがない。
そんな彼女の夫が、俺なんかでいいのだろうか?

「後で、さっきのキャッシュカードの家族カードを作って渡すね」
「へ?」
「一枚くらい持ってても」
「……私も働いているので、お金には困ってません」
「分かってるよ」
「ATMを使ったことがなかっただけで、士門さんのお金を…」
「そこは気にせず、頼ってくれていいんだよ?」
「……」
「篁家の令嬢だし、自立して働いているのは知ってるけど、それとこれとは話が別で。夫としての甲斐性みたいなものだから」
「……」
「そりゃあ、お義父さんのように高級マンションをポケットマネーでポンとは無理かもだけど、妻にお小遣いくらいはあげたいから」
「へ?!」
「キャッシュカードじゃなくて、クレジットカードの方がいいなら、そっちにするけど。使う使わないじゃなくて、持ってるだけで安心できるカードってやつ」
「……」
「家族の免許証?みたいなものだから」

きっと、運転免許証だって不必要だから、免許証と言われてもピンと来ないかもしれない。
それでも二谷やお義父さんに内緒で、二人だけの秘密があってもいいかな?だなんて思ってしまった。

「ありがとうございます。凄く嬉しいです」
「本当に?」
「はい」

握っている手に力を込めたら、ぎゅっと握り返された。
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