好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
**

「お疲れ様でした。本当に助かったよ」
「私、本当に大丈夫でしたか?」
「五百点満点だよ」
「それならいいんですけど」

ロレンツィオ氏のご家族と会食を終え、自宅マンションへと帰宅途中。

ALKの主要株主だと、行きの車内で聞かされていたから。
ソフィアちゃんのご機嫌取りに必死になりすぎてしまった。

私が『凱亞』だと、バレてないだろうか?

顔のパーツ(表情)をあえて描かずに、出来る限りの依頼をこなしたつもりだ。
表情を描いてしまうと、クリエイターが誰なのか、すぐに分かってしまう。
それくらい個性が出るものだから。

画に詳しい人なら、タッチやポーズなどでバレてしまうだろうが、さすがに士門さんにはバレてないはず。

ソフィアちゃんに似ていると言われ、ドキッとしたけれど。
それ以降は、出来る限り個性を隠したつもりだ。

「それにしても、凄く絵が上手いんだね」
「……専門の勉強をしたので」
「凄いね」
「ゲームアプリを作っている士門さんの方が凄いですよ」
「そんなことないと思うけど」

デジタルのイラストを描くのに、ソフトを使いこなすのもかなり苦労した。
それが、平面のイラストだけでなく、音響だったり、ストーリーだったり。
そもそも、ゲームは動き続けるものだ。
どんな風に組み込まれているのか、想像もできない。

英語が話せないわけではないけれど、『イタリア系アメリカ人』と聞いて、物凄くドキドキしていた。
普段家に引き籠っているから、上手くコミュニケーションを取る自信もなかったし。

士門さんが満足そうにしている姿を見て、漸く安堵した。
< 47 / 148 >

この作品をシェア

pagetop