好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
(士門視点)

ロレンツィオ氏との会食を終え帰宅した俺らは、大量に購入したお菓子をパントリーに片付けた。
その流れの中で、二谷はこの家に住んでいないという事実を知って、嬉しすぎて、脳細胞が死滅したんだと思う。

気付いたら彼女の腕を掴んで、パントリーのドアに張り付けるみたいに壁ドンしていた。

うっっっわっ、めっちゃ見られてる。
いや、俺がガン見してんのか?

これ、美少女の特性なの?
瞳から、なんか怪しいビーム発してない?

俺の心臓、爆上がりなんだけど。

車内やコンビニでのやり取りの時にも思ったけど。
すっげぇいい匂いがしてんだよ。

フローラル系なのに、仄かに柑橘系の香りもあって。
甘めなのにすっきりとしてる感じが、マジで男心を擽るというか。

普段、こんなにも近づかないから気づきにくいけど。
鎖骨部分にほくろがある。
やばっ、ガン見してたら、ドン引きされそう。

けど、止められんねぇ。

すげー近いし、可愛いし、お色気ハンパねぇし。
ハーフアップすっげぇ似合ってるし、睫毛がくるんとしててかわいいし。
上から見下ろすと、贅沢すぎる眺めだし。

『二谷はいない』
『今なら邪魔が入らない』
『今日は凄くいい雰囲気だった』

脳内の悪魔が、次々と甘美な誘惑を持ち掛けて来る。

『怯えてるだろ』
『コンビニも知らないお嬢様だぞ』
『結婚式の時を思い出せ』

脳内の天使が必死に訴えて来る。

『夫はお前だ』

悪魔の囁きに、最後の理性を手放した。


―――甘く熟れた果実のような唇に吸い寄せられて。
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