好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
「振り袖姿の胡桃さん、とてもお綺麗です」
「……ありがとうございます」
社交辞令と分かっていても、やっぱり嬉しいものだ。
日本庭園によくある、飛び石。
振り袖姿では少し歩きづらいが、私の歩幅も考慮して、ゆっくりと歩いてくれる彼。
「胡桃さんは今年で十九ですよね?」
「はい」
「若いなぁ」
「……そうですか?」
「若いですよ。自分今年で二十五ですから」
「……六歳差ですね」
釣書で一通りのことは把握していたつもりだが、改めて口にして実感する。
六歳という歳の差を。
「まだ遊びたい盛りでしょうし、やりたいことだってこれから見つかるかもしれないし」
「それを言ったら、淪さんだって同じですよね?」
「そうかもしれませんが、私は自分の趣味を仕事にしているので、遊びもやりたいことも仕事も一緒というか。とにかく、他にしたいことはないので」
「……そうなんですね」
それを言ったら、私も同じなのでは?
好きな絵を描いて生活してるし、それが仕事でもある。
彼と違うのは、全てが自力でそこに到達したか、そうでないかの違いだ。
「高校を卒業されて、大学へと進学されなかったと伺ってるのですが、普段は何をされてるんですか?」
「……父の会社の制作スタッフとして、手伝いをしています」
「あぁ、なるほど。うちの会社より、色んな形での仕事がありそうですもんね」
さすがに絵師として働いているとは言えない。
父親からも『誰にも言うな』と言われているし、社長としてのメンツもあるのだろう。
「あの…」