好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜


『お嬢様、今夜の士門様はお優しく感じます。私はこれにて失礼致しますので、ご夫婦でしっかりと話し合って下さい』
『失礼するって、上がるってこと?まだ新作のラフ画(モデル必須)が終わってないわよ?』
『士門様がして下さいますよ。さほど難しいポーズはございませんし、何より、二人で会話されるのはいい機会かと存じます』

キッチンに飲み物とつまみを用意しに行った二谷からこっそりメールが届いた。

『凱亞の件も?』
『私は大丈夫だと思います。夫婦で秘密を共有すると、愛が深まるという分析結果もあるくらいです』
『そうなの?』
『お互いのプライバシーを尊重しつつ、趣味を仕事にしているお二人だからこそ、共通の話題が見つかるはずです』

二谷のメールにハッとした。
ALKからゲームアプリのイラストの依頼が来ていることを思い出したのだ。

「胡桃さん」
「あっ、はい!」
「そんな緊張しなくても…」
「……すみません」
「ちょっと着替えて、明日の用意してくる」
「明日の用意?」
「……言ってなかったよね。明日から二泊三日で上海に出張でね」
「えっ?!」
「土曜日の昼過ぎに帰国するから、夜のレセプションには間に合うから」
「……お仕事のし過ぎでは?」
「まぁ、社長だしね。暇すぎるのもどうかと思うけど」
「それにしたって…」

時差だってあるだろうし、出張の疲れも出るだろうし。
なのに、休む間もなくレセプションに出席しなければならないだなんて。

「用意って、着替えとかですか?」
「……うん」
「では、手伝います」
「いいの?仕事は?」
「ちょうど煮詰まって休憩しようと思ってたので大丈夫です」
「……それならお願いしようかな」

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