好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜


士門さんの寝室に入るのはこれが二度目だ。
前回も勢いで入ったようなものだけれど、いつ入っても綺麗に掃除が行き届いている。

「これに二日分の着替えを用意して貰いたい。スーツは俺の方で準備するから」
「分かりました」

二泊三日にしては少し大き目のキャリーケース。
ウォークインクローゼット内のチェストの前に誘導された。
下着やTシャツ類がここにあるらしい。

キャリーケースを開けると、トラベル専用の圧縮ポーチや必需品の髭剃りなどが収められているポーチが既に入っている。
というよりも、出張がちだから入れっぱなしなのかもしれない。

「男物の下着触るのが嫌だったら俺がするから残しておいてくれれば」
「あ、いえ、大丈夫ですっ!」
「そう?」

チェストの引き出しを開けて固まっていたからだ。
私が躊躇していると思われたようだ。

「これって、いつもご自分でされてるんですか?」
「……大抵は」
「では、士門さんがされない時は……?」

自分で聞いて、自分の首を絞めている。

「秘書がしてくれるけど」
「……そうなんですね」

やっぱりね。
そうだと思った。

当たり前のように寝室にも書斎にも出入りしているのはあの人くらいだ。

妻の私以外の人が、夫の下着を管理する。
秘書って、そんなことまでするものなのかしら?

自分が描く俺様社長を思い出してみる。
……させてるわ。
下手したら、愛人へのプレゼントだって用意させるくらいだもの。

「スーツはこれとこれにしたから、Yシャツの色を合わせて貰える?」
「スーツもキャリーに入れるんですか?しわになるのでは?」
「これはしわにならないオーダースーツなんだよ」
「そういうのがあるんですね」
「出張用にね」
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