好き避け夫婦の秘めごと ７年越しの初夜

（士門視点）

やっっっっっっばっ。
何、この展開。

『秘密』と言うから、ベールに包まれた令嬢の過去だとか素性かと思った。
結婚して夫になったから、俺だけにはその秘密を打ち明けてくれるのかと。

篁の令嬢である彼女が、あの『凱亞』だったなんて。

そんなの、想像の域を遥かに飛び越えて、何て返していいのか分かんねぇよ。

『今までよく頑張ったね』

深く考えずに彼女の頭を撫でていた。
他に見合う言葉が見つからなかったというのもある。

勇気を出して言ってくれた彼女の気持ちに応えるには……。

「じゃあ、俺も」

本当は死ぬほど知られたくない。
だけどこの先、何十年と一緒に過ごしていくのなら、隠し通せるとは思えない。

胡桃さんが『凱亞』だということは、俺が思っていた『令嬢』とは少し違うのかもしれない。
だって、ＴＬやライトノベルのコミックや小説を手掛けているということは、それなりの知識があるということだから。

何も知らない穢れのないお嬢様とは違うということか。
年齢相応に知識はある、そういうことなのだとしたら……。

彼女の手を掴んで、禁断の園(書斎)へ。

「え……士門さん？」

普段は鍵をかけている書斎のドアをゆっくりと開けて、中へ彼女を招き入れる。
特注の大型デスクにはデスクトップのパソコンが六台と、ありとあらゆるゲーム関連の最新機器。
そして、壁には『75V型4K』テレビ。
それも、ゲームプレイに特化した倍速パネル（パネルの駆動周波数が120Hz／1秒につき120回の描画できる仕様）だ。

「ここに座って」

大型テレビの前に置かれた三人掛け用のソファに座らせ、すぐさまオンラインゲームにログインする。
本当の俺を見たら、どんな反応を示すだろうか？