好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
予測不能な夜

「士門さん、大丈夫ですか?」
「……あぁ、何とか」

取引先のレセプションに私と出席したのだけれど、どうも様子がおかしかった。

出張の疲れが溜まっているのとばかり思っていたが、触れる手が物凄く熱くて。
一時間ほど出席して、二谷に迎えに来て貰ったのだ。

車に乗り込んだと同時にネクタイを緩め、窓を僅かに開け、吹き込む風に身を委ねるみたいにしている。

今日は数日前にキスを拒んでしまったことを謝罪しようと思っていたのに、そんな空気ではなさそうだ。

後部座席の窓ガラスに凭れかかるようにしている彼。
高熱で意識が朦朧としているのかもしれない。
既に目を瞑っている。

「士門さん、私に寄り掛かって下さい。肩でも膝でもどこでもいいので」

私の言葉に反応するようにルームミラーで二谷と視線が交わる。
彼の体調不良を把握してくれたようだ。

彼の背に腕を回し、頭を支えるみたいにしてゆっくりと横に倒す。
本当に意識がないのかもしれない。
抵抗することなく、私の膝の上に頭が乗せられた。

シートベルトをしているから、少し呼吸しづらそうだけれど。
窓ガラスに当てて冷やした手をそっと彼のおでこに当てると、気持ちよさそうな寝息を立て始めた。

「二谷」
「はい」
「士門さん、熱があるわ」
「お食事はとられてましたか?」
「ううん、殆ど口にしてないわ。それどころか、無理してシャンパンを三杯も」
「それでは、相当体に堪えているでしょう」

しつこくお酒を勧められた私の代わり、彼が飲んでくれた。
私がまだ二十歳に達してなくて、お酒が飲めないから。
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