好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

完全に寝ぼけて言っているのは分かってる。
分かっているんだけど、そのワードのチョイスはダメだって。

みるみるうちに、制御不能に……。

「胡桃さんっ、……胡桃さん?」

今ここで起こしたとして、その後の展開が目に浮かぶ。

『最低っ!!』となじられてビンタされて。
氷視とも思えるほど刺々しい視線を向けられて、完全に嫌われるパターン。

起こさないでいたらいたで、軽蔑されたりして、二度と会話して貰えなさそうだ。

自分の体から剥がすように彼女の肩を軽く押すと、『んっ…』と声を漏らしながら、長い睫毛がゆっくりと持ち上がる。

「……士門さん?……体、もう大丈夫なんですか?」

目が覚めた彼女はガバッと起き上がって、ベッドの上に正座した。

「熱は……?」

スッと伸びて来た手。
俺のおでこに当てられ、体温を確認する。

「よかったぁ。下がったみたいですね」

にっこりと微笑んだ彼女は、『くしゅんっ』と可愛らしいくしゃみをした。
そして、自分自身の状態を漸く把握したのか。
耳まで真っ赤になった顔で掛け布団を手繰り寄せた。

「ごめんなさいっ、お目汚しして…」

え?
これってどういう展開?
俺、なじられて暴言吐かれてビンタされんじゃないの??

「勝手にして本当にごめんなさいっ」
「……胡桃さん」
「っ……はい」
「何で謝ってるの?謝るのは俺の方でしょ?体調不良で倒れた俺を看病してくれたんだよね?」
「……看病のうちに入らないかも」
「へ?」
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