好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
「39度の熱に魘されて『熱い、熱い』と何度も仰るので」
「……ん」
「解熱薬を飲んでも下がらなくて、冷却シートや冷却ジェル枕だけでは足りないようだったので…」
「……ん」
「私が保冷剤になって全身冷やした方が手っ取り早いと思いまして」
「……え?」
「冷水浴びて、士門さんを…」
え、ええええっ?!
ちょっと待って。
そんな美味しい展開、何俺見逃してんの?!
ってか、それじゃあ、胡桃さんが風邪引くじゃん!
「ハッ…くしゅんっ」
ほら見たことか。
完全に風邪引いてんじゃん。
「ごめん、看病してもらったうえ、風邪まで引かせてしまって」
「……全然大丈夫ですよ。私が勝手に何度もしたことなので」
「へ?……何度も?」
「あ……」
「何回、冷水浴びたの?」
「………四回」
「っっ…」
浴びすぎだよ。
今まだ四月だよ。
冷水浴びる時期じゃないって。
「ごめん、本当にごめんね」
サイドテーブルの上に置いてあるリモコンでエアコンの暖房スイッチを入れ、掛け布団で包むようにして抱きしめる。
冷え切った体を温めるのに、肌と肌を密着させて体温をキープするのはよくある展開だけど。
火照った体を冷ますのに、冷水浴びて『人間保冷剤』になるなんて、聞いたことねーよ。
「何か着る服持って来る」
「あっ、大丈夫ですよ、士門さんっ!……自分の部屋に戻ります」
「……その格好で?」
「あ……」
辺りを見回しても彼女の服が見当たらなくて。
ベッドから下りて、自分の部屋着を取りに行こうとした俺の腕を彼女は咄嗟に掴んだ。
白く細い腕が露わになる。
華奢な肩に存在感を成す、黒い肩紐。
俺の視線がその部分へと。
「じゃあ、こうしよう。ちょっとじっとしててね」
「ふぇっ……っっ」
掛け布団で彼女を包んで、そのまま抱き上げた。