好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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「お嬢様、お加減は如何ですか?」
「……ん」
「まだ熱が下がりきってないので、またぶり返すやもしれません」
「………ん」

士門さんの高熱をどうにかして下げないと……と思った私は自分自身の体を冷却材にして、彼の熱を下げようとした。
その結果、彼の熱は下がったけれど、自分が熱に魘され寝込むはめに。

39.2度あった熱が37.6度まで下がった。
解熱薬を飲むほど高くないし、仕事ができるほど体が軽くなったとは言いがたい。

二谷が言うように薬の効果が切れたら、また熱が上がりそうだ。

「士門様は二時間ほどで戻られるそうです」
「……ん」
「今日はゆっくりお休み下さいませ」

出張の報告と打ち合わせがあるとかで、日曜日なのに出社している士門さん。
私が発熱したことで、心的ストレスを与えているのでは?と心配になる。

「喉ごしのいいものを何かお持ち致しましょうか?」
「……」

声を出すのも辛い。
喉が痛くて、顔を横に振るのが精一杯。

「では、士門様のお食事のご用意を」

胡桃は小さく頷いて瞼を閉じた。

**

冷たくて気持ちがいい。
ひんやりした感覚が頬や首筋に伝わる。

結局、薬の効果が切れた私は再び熱が上がり、全身の節々が痛みを伴い、喉が痛くて食事も喉を通らない状況。
寝返りを打つ体力もなく、瞼を押し上げる気力もない。

額に貼られていた冷却シートが剥がされ、新しいものに貼り替えられる。

「……ァ……りが…とッ」

風邪で寝込むだなんて、何年ぶりだろう。

幼い頃に母を亡くし、父は仕事人間だったから、体調を崩して寝込んでも、傍にいるのはいつも二谷だった。

「……に…たに」
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