好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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「……んっ…」

気怠い体。
汗ばむ肌。
乾ききった喉。

そう言えば、士門さんの看病をして、見事に熱を出したんだった。

数年ぶりに引いた風邪は、思ってた以上に体に堪えて。
関節という関節が軋んで、腕を持ち上げることも声を出すのも辛くて。
士門さんに不要な心配をかけてしまったと後悔した。

次に会った時は、何て声をかけたらいいのやら。
まだキスを拒絶したことすら謝ってもいないのに。

次から次へと問題が山積だ。


乾いた喉を潤したくて上半身を起こそうと試みるも、金縛りに遭ったみたいに動かない。
恐る恐る瞼を押し上げると、シルク地に白いボタンがあしらわれているものが視界に映った。

―――え。
これって、まさか。

視線だけでなく、ゆっくりと顔を持ち上げると。
そこにいたのは、シルクのパジャマを着た士門さんだった。
それも、私を抱きしめたまま眠っている。

思考が追い付かない。
高熱で脳が蕩けてしまったのだろうか。

今見ているこの光景は全て夢の中で、私が思い描いた世界が広がっている……とか?

「……気分はどう?どこか痛い所とかはない?」
「へ?」

妄想を消去しようとブンブンと顔を振ったからだ。
彼が目を覚ましたようだ。
……ということは、これは夢じゃない!!

「だっ……大丈夫ですっ」

そっと前髪が持ち上げられたと思ったら、こつんとおでこが合わさった。

「熱は下がったみたいだね」

体温を確かめたのか。
イケメンがすると、心臓に悪すぎる。

えっ、……ちょっと待って。
この展開、デジャヴじゃないよね?

「まさかとは思いますけど、士門さん、冷水浴びてないですよね?」
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