好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

一瞬目を見開いた彼は、プッと吹き出すように笑いだした。

「ハハハッ、……さすがにそれはないよ」
「……ですよね」

まともな人間なら、あんなこと(人間保冷剤)はしないよね。

「して欲しかった?」
「へ?」
「俺にも、あーいうことをして欲しかったのかな?とか思って」
「っ……」

私が聞いたからだ。
私の脳内が、そういう方向に向かってると思われたのだろう。

不意に視界に入った時計。
サイドテーブルの上に置いてある時計が七時三十五分を示している。

「大変っ!士門さん、お仕事遅刻しますよ!!」
「え?」
「もう七時三十五分です!」
「………プッ、フハハッ」
「……??」
「今、夜の七時三十五分だよ」
「へ?……えぇ~っっ」
「ちなみに、日曜日ね」
「っっ」

私は半日寝ていたようだ。
午前中に会社に行った彼は仕事を終えて帰宅し、私の看病?をしていたみたい。

「お腹空いてない?二谷が消化のいいもの作ってくれてるはずなんだけど」
「……少し」

いつになく優しい彼の眼差しにドキドキしてしまう。
だって、物凄く近いんだもん。
綺麗すぎる美顔が。

下がったはずの熱がまた上がって来たのかしら?
顔に熱が集中している気がする。

部屋を出ていく彼の後ろ姿をじっと見据える。

病気になるのも悪くないかも。
こんな風に彼が優しく接してくれるなら。
……なんて、不埒なことを考えてしまった、その時、勢いよく寝室のドアが開いた。

「着替える?」
「ゥヒャッ!?」
「フフフフッ、ごめんごめん、ビックリさせて。着替えるなら手伝うよ?」
「だっ、……大丈夫ですっ」
「そう?遠慮しなくてもいいのに」

冗談で言ってるのは分かってるのに。
悪戯っぽく笑うその笑顔にもドキドキしてしまった。
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