好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

すらすらとペンを走らせ、ラフ画を描く胡桃さん。
仕事モードに切り替わったようで、俺がいることすら忘れているようだ。

テーブルの上に置かれた缶ビールをプシュッと開けて喉を潤す。

もうモデルは終了でいいんだよな?
ってことは、用済み??
俺は自室に戻っていいのかな?

暫し可愛い横顔を盗み見していた、その時。

「あのっ!」
「……ん?」
「もう一つお願いしてもいいですか?」
「モデル?」
「……はい」
「いいよ」

突然何かを思い出したようで、作業用の机の引き出しから茶封筒を取り出して来た。

「えぇ~っと……ちょっと待って下さいね」
「……ん」

封筒から紙を取り出し、その書類らしきものを手にして部屋の中を歩き始めた彼女。
何が書いてあるのだろうか?

「私とトランプで勝負しませんか?」
「は?」
「それで、負けた方が勝った方からキスマークを付けられる」
「……え?」
「付ける場所の指定は無しで、勝った人はどこでも好きな場所に付けてOKってことで」
「……」

何それ。
拷問パート2みたいなもの?
そもそも、夫婦だけど……俺らそんな仲よかったっけ?
キスマークって、ラブラブしてる恋人や夫婦の証みたいなものだよ。

キスしたことはあっても、俺らそういう関係じゃなくない?
何をどうしたら、トランプゲームでキスマークに繋がるの??

「その紙、見せて貰うことできる?」
「これですか?……いいですけど」

いいんだ。
密書みたいな指示書かと思ったのに、あっさり許可でたよ。

彼女から紙を受取って内容を確認する。

< 82 / 148 >

この作品をシェア

pagetop