好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
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士門さんにキスマークを付けて貰った翌朝。
ドキドキしながら姿見でその部分を確認する。

士門さんに見せた書類は、背景の修正依頼の指示書。
けれど、本当はもう1枚の修正依頼のもので、全くの別シーン。

『夫の後ろ首にキスマークを見つけ、浮気が発覚』
『愛人に対抗するように、愛人が付けた場所ではない所にキスマークを付ける』

首や胸元につけるのは王道すぎる。
愛人に勝つためには、もっとコアな部分に付ける必要がある。

そんな場所をも……愛した証。

付け方自体は、TL漫画を担当する前に一連の描写を学んだから知っていたけれど。
実践は初めてだった。

最初の数か所は、殆ど色がつかないくらいのもので。
パッと目に分かるくらいの色を付けるのが、結構大変なことだというのが分かった。

私は水着姿だったからどこにでも付けやすい状況だったけど。
士門さんは普通に服を着ていて。
その服を脱いで貰うのもドキドキした。

背中や太腿の裏に残るキスマークの痕。
士門さんは、し慣れているのかな……。
結構くっきりと付いてる。

モデルという口実だったけれど、彼の肌に触れることができた。
それに、暫くはあの人の所には行かないだろう。

トランプタワーは一人で遊べるし、集中力を高めるのに最適だから、結構得意。
士門さんには申し訳ないけど、たくさん付けさせて貰った。

頭で考えるのと違って、目で確かめるのは大事なこと。
実際首や胸元に付けても、ドキッとはしなかった。

脇に近い腕の内側だとか、腰骨に近い背中の下あたりは、さすがに愛人でも息を呑むだろう。

作画依頼の作品の愛人に宛てたものか。
あの秘書に宛てたものかは定かではないけれど―――。
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