好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜
(士門視点)

「おかえりなさいっ!!」
「っ……ただいま」

結婚して3年。
帰宅したと同時に、こうして物凄いテンション高めの胡桃さんに出迎えられるのにも慣れたけれど。
俺らの関係性は、3年前と殆ど変わっていない。

「モデルの依頼?」
「はいっ」

にっこりと微笑む妻。
その顔、ホントに反則だよ。

彼女のモデル依頼は、毎回ぶっ飛んだ内容のものが殆ど。
だから二谷が拒絶してんのかな?とか要らぬ詮索をしてしまう。

けれど、悪い気はしない。
その依頼内容がどんなものであっても。
彼女と同じ空間で過ごせるなら、ありえないシチュエーションでもウェルカムだよ。

「着替えたら部屋に行けばいいの?」
「いえ、着替えずにそのままで」
「え?」

俺の手からビジネスバッグを取り上げ、ルンルンな感じで俺より先に部屋へと向かう。
今夜は一体何をする気なのだろうか。

自分の寝室に入ると、

「あっ、待って!」
「……?」

ウォークインクローゼットに向かいながら、ネクタイを緩めた俺の元に慌てて駆けて来た。

「私が脱がせたいんです」
「……へ?」
「黙って、脱がされて下さい」
「……」

おいおいおい。
またヤバいシチュエーションなんじゃねーの、これ。

ネクタイを引き抜こうとしていた俺の手をゆっくりと引き離す。
そして、深呼吸した彼女は、それまでの胡桃さんとは思えない表情でネクタイを解き、Yシャツのボタンを外し始めた。

「今日、友達の出産祝いに行って来たの。ちっちゃくてふわふわしてて凄く可愛かったわ。……そろそろ私たちにも天使が舞い降りていい頃じゃない?」
「へ?」
「赤ちゃん、……欲しくなっちゃった」

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