好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

「お嬢様、今日は14時に衣装合わせが入っておりますので」
「分かってるわ」

2週間後に開かれる『ALK』の創立10周年を祝うパーティー。
その式典で着るためのドレスを試着することになっている。
既にオーダー済みで、最終確認のためのサイズ合わせだ。

士門さんの会社(ALK)の創立記念祝賀会なのだから、当然社長の妻として出席しなければならない。

これまでも社長の妻として出席したことは何度もあるが、その度に現実を突き付けられて来た。

『社長の妻≦社長の秘書』

取引先の人もALKの社員も、私よりも秘書の木下さんのご機嫌取りをする。
それはまるで、私など眼中にないと言われているようで。

士門さんと腕を組んでいるのに、話しかけるのは隣りにいる私ではなく、彼の右斜め後ろにいる彼女なのだから。

「二谷から見て、私ってそんなにも幼く見える?」
「はい?」
「結婚して7年が経とうとしてるけど、私は成長してないかしら?」
「そんなことはないと思いますが」
「本当のことを言ってちょーだい。女性として見えない?」
「お嬢様は十分魅力的ですよ」
「世辞は結構よ」
「お世辞ではなく、本当のことを申し上げているのですが…」

アトリエで作業中の胡桃。
ペンタブから視線を持ち上げた。

「ソファに隣り合わせで座って、お酒も入っているのに、指一本触れようとしないのよ?」
「……お嬢様のことを大事になさっているのかと」
「大事に大事にっていつも言うけど、結婚して7年よ?今時、中学生でもキスくらいするわよ」

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