好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜


幼い頃から贔屓にしているドレス専門店でドレスを試着する。

落ち着いた色目のブラウンのタキシードは、クラシカルな雰囲気もありつつ遊び心も兼ね備えた上級な装い。
その彼のタキシードに合わせたダークサーモン色のドレス。

一見シンプルに見えるけれど、ソフトマーメイドデザインだからかな。
女性らしくエレガントなシルエットを演出してくれる。

さらに、オープンバックになっていて、腰部分からトレーン状にバラの花の形をした凝ったデザインになっている。

『幼く見えないように』『エレガントな美しさを』

今まではAラインのドレスが多めだったから、少し冒険をしようと思って。

大胆なドレスを着れば色香が出るだなんて思ってないけれど。
1秒でも長く、彼の視線を釘付けにしたい。

だってあの人は秘書だから。
パーティーだからと、華やかなドレスは着れない。

『妻』という、唯一無二のステータスをこんな時以外に使える時がない。

悪あがきなのは分かってる。
それでも、一瞬でもいいから。
夫である彼に、『妻』を意識させたい。



先月、父親に命令されて、婦人科を受診した。

結婚して7年近く経っていて、一度も抱かれていないだなんて言えるはずもなく。
まだ処女のまま、だなんて思いもしないだろう。

一通りの検査をして、医師から告げられた言葉は――。

『このままだと、5年後くらいには閉経しますよ』

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