好き避け夫婦の秘めごと 7年越しの初夜

早発閉経気味だと診断が下った。
通常50歳くらいで閉経を迎えるのが一般的だが、それが20~30代の女性でも起こり得るらしい。

今はまだ完全に排卵が停止した状態にはなってないが、このまま放っておくと、数か月に1度の排卵になるだろうと。

私の場合、ストレスや生活習慣(夜型生活)が原因らしく、生活習慣を見直したとしても、ストレスを軽減させることはできるだろうか。

夫に、『抱いて下さい』とは言えない。
私がどんなに願ったとしても、彼の心は別の所にあるのだから。

結婚当初よりは帰宅する率が増えたけれど。
私を見つめる瞳は変わってないように見える。



ドレス専門店を後にし、大手百貨店に寄ることにした。

妻として、夫の会社の創立10周年を祝いたいから。
何か形の残るものをプレゼントしたくて、二谷と一緒に百貨店内を歩く。


起業してこの10年で彼の会社は毎年右肩上がりの業績を維持している。
ゲームアプリの年間売上の上位は、ほぼALKのものだ。

結婚当初から結構年収はあった方だと思うけれど、最近は『ALK』と『SHIMON』という名が世界中のゲーマーに愛されていて、ネットニュースでも度々目にする。

だから彼は何でも持っていて、彼が欲しいものなんて思い浮かばない。

「お嬢様、ビアグラスなどは如何ですか?」
「ビアグラス?」
「はい。士門様はワインよりも日本酒、日本酒よりもビールがお好きです。それもラガービールが」
「……なるほど」
「現在使われている器は食洗器対応のものなので、風味や味よりも、手入れを優先されているのかと」
「器によってそんなに違うの?」
「はい。泡のクリーミーさや味のコク、手の温度が伝わりにくいものから香りに至るまで違いが出ます」

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