あの……殿下。私って、確か女避けのための婚約者でしたよね?
 ほっと息をつく。常に衆目を集める王族と並び立つのは、何年も共に居て数をこなしたとしても、どうしても緊張してしまうものだ。

 私が話し出すのを待つように、シェーマス様は長い足を組んで頬杖をついた。

 彼の立場ではお行儀が悪いとも取られかねない態度だけど、けだるく疲れた様子でも、嫌になるくらい魅力的な人だ。

 私のような女避け要員が、必要になるくらいね。

「あの……女避けしたいからと、シェーマス様と婚約しましたけど、私もそろそろ適齢期を過ぎようとしていますし、正式な結婚相手を見つけたいです」

 私たちの婚約は正式なものではなく、女性受けの良過ぎるシェーマス様に、王太子としての立場が安定するまで女避けとして婚約者をして欲しいと頼み込まれたのだ。

 シェーマス様には腹違いの弟が二人居て、それぞれを担ぐ貴族たちもたくさん居る。そんな中で、王太子としての立場が安定するまで傍に居て欲しいという願いはもっともで、私もぜひ協力したいと頷いた。

 ……けれど、今のままでは、私の方が、嫁き遅れとなってしまう。

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