私の白王子と黒王子
「る、類ッ……! もぅ、大丈夫だよ」


すると類は我に返ったように動きを止めた。


「……申し訳ありません」


さっきまでの類が嘘みたいにテキパキとロボットみたいに私のボタンを留め、毛布をかけ直してくれる。


私はというと、さっきの高揚した気持ちが続いていて、まだ頭がぼーっとしていた。


「そんな顔、私以外には絶対に見せないでください」


私、そんなに変な顔してるのかな……?


手元にスマホも鏡もないから、類がなんのことを言っているのかは分からない。


「他の奴が見たって考えるだけで……どうにかなりそうになる」


あ、まただ。


今日は珍しく、類が敬語じゃない瞬間がある。


いつものピシッとした隙のない感じの類ももちろん好きだけど、類の素が見れている気がしてこういうのもいいな。


「分かった。類の前だけに……す……」


その時、類の首元から下がる十字架のネックレスが目に入った。
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