私の白王子と黒王子
「そうじゃなくてね……類にお願いがあるの」


「お願い? もちろん、私にできることならなんでも」


「うん、類ならそう言ってくれると思ってた!」


私は類の前に自分の手を差し出す。


類は一体なんのことか分かってなさそうだ。


「この前のおまじない。もう1回かけてほしいの」


私がよっぽど無茶なお願いをすると思っていたのか、類は気が抜けたように笑った。


「なんだ。そんなの、いつでも、何回でもかけますよ」


類は私の手を自分の唇に近づける。


類の大きくてあったかい手。


もうこの手に触れてもらえるのも最後なんだなぁ……。


——チュッ


そして今度は私の番。


——チュッ


自分の手の甲越しだけど、類の優しいキスをちゃんと感じる。
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