私の白王子と黒王子
そんなことを考えながら歩いていたからか、階段を降りている最中に私は大きく段差を踏み外した。


やばい、このまま転がり落ちる——!


私は衝撃に備えてギュッと目を瞑った。


しかしいつまで経っても衝撃や痛みはこない。


その代わり、お腹の辺りに感じる逞しい腕と背中に感じる鍛えられた胸板、そして微かに香る爽やかなデオドラントスプレーの匂い。


「大丈夫ですか? 聖奈様」


この優しく耳心地のいい低音ボイスは、彼しかいない。
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