私の白王子と黒王子
私はと言うと、類から久しぶりにこっぴどく叱られていた。


「もうあんな無茶は二度としないと約束してください! いいですか?」


「はい……心配かけてごめんなさい……」


「それから……私も謝らなければならないことがあります」


「類が私に? なんのこと?」


「昔、このネックレスをした人物に助けられたという話。私には心当たりがなかったのに、否定をしなかった。すみませんでした」


内心、なんだそんなことかと思ってしまった。


類は本当にどこまでも誠実な人だ。


「いいの。私こそ、なんか勝手に決めつけちゃってごめんね」


「私は聖奈様にとって、あの時の王子ではないかもしれませんが、あなたを想う気持ちは誰にも負けるつもりはありません。それだけは覚えていてください」


「類……」


頬に触れている類の手が少しだけひんやりとして気持ちいい。


私はその上からそっと自分の手を重ねた。


あの時助けてくれたのが類じゃなかったとしても、類だって私にとっては王子様なんだよ?


どうしたらこの気持ちが伝わるのか——。


私はここで唯の言葉を思い出した。


『気持ちを伝える方法は何も言葉だけじゃない。相手に触れるとか、そういう小さな仕草でも十分伝わるんだから』


そうだよね、唯。


それが多分、今なんだ……!


私は類の腕を握って、精一杯背伸びした。


類の唇に届くように。


引き寄せられる磁石のように、類も顔を近づけてくれた。


もう少し、あと少し——!
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