俺が貴女を護ります~エリート海上自衛官の溺愛~
「結婚相手を探していると言っていたが、候補は見つかった?」
「えーっと……」

 せっかくいい相手と巡り会えたと思っていた矢先の『護りたい人』発言ですっかり自信を失いかけていた結芽は返事に困っていた。
 それを正直に言えばまた結果は変わるかもしれないが、結芽にそのような勇気がなかった。自分がどのような目で見られるのかを考えてしまうし、航平にそう思わせる相手がいるというのに恋愛関係に発展できるという自信がないからだ。

「つまりはいない、ということだな」

 航平は結芽の気まずそうにしている様子から言わんとすることを悟った。

「その通りです」

 しょんぼりとした面持ちで航平にそう伝えると、航平は結芽をじっと見つめてくる。
 その視線に気づいて結芽は垂れさせていた頭を上げると、目が合う。

「な、何よ」
「それなら、俺でいいじゃないか」
「は?」
「俺でいいじゃないか。結婚相手」

 結芽は目を丸くして口があんぐりと開いてしまった。
 航平は何も表情を変えず、アイスコーヒーを飲んでいる。

「ちょっと待って訳がわからない。え、なんでそうなるの?」
「俺も独身だし、結芽も独身。同じ境遇だろ? なら、俺でいいじゃないか。俺は結芽と再会して話していて楽しいと思えた。これから結婚を視野に交際するには適していると思うが」
「だって、さっき護りたい人がいるって──あっ」

 急な展開で思わず心に留めておこうとした言葉までぽろりと出てしまったせいで、反射的に口を隠す。

「気にしなくていい。あれは、俺の大切な人たちを護りたいって意味だから」
「そうなんだ……って、いやそれは置いておいて! も、もう……航平くんってよくわかんないや」
「よく言われる」

 結芽は、はあ、と溜め息をついて頭を抱える。
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